樹脂成形のハイサイクルを実現する金型技術：ハイサイクル成形を実現する射出成形技術

摘要

射出成形技術は1950年頃以降、さまざまな材料が金属から樹脂へと大きくシフトするという社会的トレンドに乗って発展してきた。 これは極めて高い生産性を提供できる射出成形という技術シーズが、樹脂化や大量生産という社会ニーズとうまくマッチすることで、現在の大きな市場が形成されてきたと言える。したがって、高生産性を目的として、ハイサイクル化を追求するというのは、射出成形機には半ば宿命として与えられた命題であり、そのような状況にあって、技術開発の多くはサイクル短縮を念頭においたものであった。 その結果、すさまじい勢いでサイクル短縮が実現されてきた。 例えば、CDやDVDなどの基板を成形するディスク成形機では1985年頃には20秒程度であった成形サイクルが、現在では2～3秒サイクルまで短縮されている。 実に10倍近い生産性向上である。 ディスク成形以外でも、製品によっては1秒を切るハイサイクル成形も実現され、生産に供されている。 では、射出成形機では、どのような観点でサイクル短縮が図られてきたのだろうか。射出成形機は樹脂を溶融し、金型内に射出し、冷却して取り出すという単純な機械ではあるが、機械の進化の過程で、さまざまなサイクル短縮の工夫が実施されてきた。 本稿では、以下の3つのポイントに絞って解説する。 ①各工程（型締め、計量、射出、冷却）の同時複合動作化と機械動作の高速化；②溶融·冷却といった樹脂特性に依存するプロセスでの時間短縮；③取出し機や金型、周辺装置を含んだトータルシステムとしてのハイサイクル化。 本稿では、これらについて実例をあげながら解説したい。