低酸素分圧下で焼鈍した銅合金表面層における合金元素の分布

摘要

銅合金を実用的に用いるには、多くの場合バルク特性だけでなく表面特性なども向上させることが求められる．また、銅合金の焼鈍工程においては、表層付近での合金元素の分布が問題となることがある．これらの表面挙動を制御するには、合金元素の化学的性質を考慮しながら表面での現象を予測しなければなちない．しかし、合金元素の挙動は非常に薄い領域に限られるため、存在状態を系統的に調べた実験はほとんどない．銅合金に添加される合金元素には銅よりも酸化し易い元素が多い．たとえば、Fig.1はいくつかの金属元素に対するEllingham図を示しており、銅合金の母相のCuは一般に酸化しにくい元素であるのに対し、CrやSiなどの合金元素は酸化しやすい元素である．したがって、酸素分圧を制御した雰囲気で焼鈍した銅合金の表層における合金元素の分布を調べることにより、これらの元素の化学的性質に関連した挙動が調べられると考えられる．これまで銅合金の酸化については、比較的巨視的な方法により調べられた研究が多いが、最近では表層での微量元素を評価する方法などが確立されてきている．本研究では、銅合金表層での酸素と反応しやすい元素などの挙動を明らかにするために、低酸素分圧下で焼鈍した試料で形成する表層の元素分布を二次イオン質量分析法などにより分析し、深さ方向プロファイル情報から元素の特徴的な挙動について検討した．