ランチタイム·エッセイ（第12回）

摘要

「おくのほそ道」の旅三百年記念ということで，某民放テレビが「芭蕉忍者説」を立証する特別番組を企画したことがあったという。 芭蕉と督良による奥州へのこの旅は，'元禄二年（1689年）三月から八月までの，約五カ月間にわたって行われたとされているので，この企画は1989年に立案されたのであろう。 取材は，芭蕉に緑（ゆかり）のある学者や文化人を中心に，熱心に行われたが，話題が「芭蕉忍者説」に向けられると，それまで能弁だった彼らが，俄（にわ）かにロを固く閉ぎしてしまい，面白い話は一切聞き出せなかったという。 そんなわけで，この企画は結局，計画倒れに終わってしまったそうである。