海水マグネシアクリンカーの現況について

摘要

マグネシアは融点が高く（2830 deg C），侵食抵抗性に優れていることから焼結マグネシアクリンカーや電融マグネシアとして鉄鋼，セメントなどの高温処理が行われる窯炉の塩基性耐火物原料として多量に使用されており，日本においてマグネシアクリンカーは，耐火物用をはじめとして42万t（2002年度）の国内需要がある。 マグネシアクリンカーの原料としては，天然産のマグネサイト鉱石と海水があり，海水については，洛存する多くの元素の一つであるマグネシウムイオンをアルカリ原料と反応させることで水酸化マグネシウムとして回収後，焼成して得られるマグネシアを「海水マグネシアクリンカー」と呼ぶ。 資源的に乏しい日本においては，マグネサイトは殆ど産出しないが，良質な石灰石は豊富に産出する。 その石灰石と海水を原料とする工業であることが海水マグネシア工業を誕生·発展させた一つの要因であり，天然産マグネシアクリンカーとの競合の中で，主用途である塩基性耐火物原料用の海水マグネシアクリンカーの開発により進めてきた工業である。 すなわち，鉄鋼，セメントなどの高温処理が行われる窯炉において，マグネシアクリンカーは塩基性耐火物原料として不可欠な原料であり，それぞれの工業における製造技術の変遷に伴い，これを支えた耐火物に応じた品質向上のための開発であった。 ここでは，海水マグネシア工業の誕生の背景，海水マグネシアの製造方法，海水マグネシアの開発状況ならびにここ数年の世界の海水マグネシアメーカーの状況がかわりつつある中，国内唯一となった海水マグネシアメーカーの現況について報告する。