熱水系における微生物の多様性と地質への影響

摘要

熱水系における微生物の活動領域を考える上で重金属や固体鉱物を利用する微生物の研究は興味深く今後注目されるべきテーマといえよう。 そのためには微生物学と地質学の方法論からの融合が必要であり，そこにはまだ多くの解決すべき問題点が存在する，微生物生態学的手法論としてDNA抽出や特定の微生物を蛍光染色し，顕微鏡観察で認識出来る手法が培養できない微生物でさえも存在を確認出来るようになった。 微生物の蛍光染色のシグナルを増幅する手法（Pernthaler et al.，2002）を併せることで，鉱物の自家蛍光と微生物のシグナルとを識別することが可能となる。 これらの微生物学的アプローチを駆使した実試料での応用が求められる。今回行った海底熱水系の掘削調査は，デイサイト質の烏弧型熱水系であった（Urabe et al.，2001）。 高湿の熱水城はデイサイトが強い熱水変質を受け，モンモリロナイト，セリサイトクロライトあるいはクロライト/モンモリロナイト混合層鉱物などの熱水性粘土鉱物に変化しており（Marumo et al.,2002），不透水性のキャップロックを形成している。 この熱水系の構造を示す要因としては，島弧デイサイト賀の火山の場合，山体が溶岩と火砕岩の互層から成っていることが大きく作用していることから，火砕岩の主要成分（火山ガラス）は熱水と容易に反応し，やがて粘土化する。これが変質して熱水の通路を自己シールし，その下部で熱水溜まりを形成する機構が提唱されている（Urabe et al.,2003）．海底熱水系深部での熱水の動きが発達すると，熱水中の有機物を栄養とする微生物はその周辺城に群がることとなり，岩石中での生命活動を補助する重要な役割を地下熱水活動が担っていることになる。今回の調査で行った島弧型海底熱水系と対比させる意味でも，今後の背弧型拡大軸海底熱水系での掘削調査に期待が寄せられる。