砕氷艦「しらせ」の電気推進装置

摘要

新型砕氷艦「しらせ（新しらせ）」は，南極観測行動における隊員や物資の輸送及び観測活動を行うための多目的船であり，先代「しらせ」に代わり2009年5月に就役した．砕氷艦は，その名が示すとおり氷を割りながら航行することを前提としており，高出力の推進装置を必要とする．特に日本の観測隊が目指す昭和基地は，南極海で有数の流氷域であるリュツオホルム湾を越えた所にありしらせは，艦を後進させて助走した後，氷床に艦を体当たりさせて氷を割るラミング砕氷を繰り返し行いながら航行する．排水量1万トン以上の艦船がこの砕氷を繰り返し行いながら航行するには，急速に前後進できる推進装置が必要であり，さらに，このときプロペラに接触する氷海を砕くために，高いトルク特性（一般産業の電動機では150％程度に対し，しらせでは，約170％トルクを要求）をもった推進装置でなければならない．以上の理由等から，砕氷艦の推進は電気推進装置が採用されている．