インバータ駆動による船舶電気推進(3)－PWMインバータ駆動の構成と特徴

摘要

本連載は今回で第3回目になる。 前回までに船舶電気推進の変遷と動向を紹介し，また各種の可変速駆動方式の特徴を説明した．そのなかで，推進用電動機の駆動方式は，直流電動機の可変速駆動（直流可変速）から，堅牢で保守性に優れ，大容量化も容易な交流電動機の可変速駆動（交流可変速）に替わってきたことを解説した．当初の交流可変速ではサイリスタを使用した駆動方式が採用され，原理上適用できる電動機が限定されたり，電動機が大形化する問題（サイリスタモータ方式の場合）や，出力周波数の限界から電動機の極数が制限されたり，電源力率が低いなどの欠点（サイクロコンバータ方式の場合）があることを説明した．このためパワーエレクトロニクスの進歩とともに，一般産業用ではサイリスタに替わってIGBTなどの可制御デバイスを適用したPWMインバータ方式が現在の主流となっている．この動向は，電気鉄道やOA機器，および家電分野においても同様であり，互いに影響を与えつつ発展してきた．最近になって，船舶電気推進においてもPWMインバータ方式が適用されつつある状況にある．本稿においては今後の適用拡大が期待されるPWMインバータ方式について，その動作原理，電力用半導体デバイスの動向と特徴，および船舶推進用においては必須となる電力変換装置の大容量化技術などについて述べる．