大型2ストローク機関の状態監視に関する新技術とその応用について

摘要

機関運転中にシリンダライナー，ピストンリングの摺動状態をリアルタイムで監視する技術は，運航安全上だけでなく，経済的な観点からも切望されている．現在，摺動状態の異常を検知する手段としてシリンダライナーの温度監視があり，多数の適用実績がある．しかし本監視装置は，摺動異常が発生し，進展した結果としての温度変化を監視するものであるため，摺動異常初期の発見が困難な場合が殆どである．一方，経済的な面で，シリンダ注油量は船舶の運航コストに大きな影響を与えるが，実際にはディーゼル主機のピストン摺動状態の把握ができないため，シリンダライナー損傷防止の観点から最低限必要と考えられる注油量より多めに注油をしながら運航されているのが実情である．機関運転中に摺動状態を把握することが可能になれば，シリンダライナー損傷防止と最適なシリンダ油消費を達成する事で，より安全，より経済的な運航が可能となり大きなメリットが得られる．これを可能とする二つの新技術の開発について，ここに紹介する．