弱磁性物質の物理化学過程への強磁場影響

摘要

冒頭でも述べたように，弱磁性物質自身やそれらによって構成される系に対する磁場影響のメカニズムの理解が進み，いろいろなプロセスのどの要素過程にどのようにして磁場を作用させれば，そのプロセスの制御が可能になるのか，ある程度，設計することができるようになってきている．本稿では，弱磁性物質の関わる物理化学過程に，強磁場がどのような影響を与えるのか，最近になってわかってきた2つの例を紹介した．これらは，弱磁性物質への磁場効果がわかってきた後でも，磁場によるコントロールが困難と思われていた現象で，磁場制御の適用対象をさらに広げるものである．弱磁性物質によって構成される物理化学過程への影響は，ここで紹介したほかにも様々なものが知られている．また，磁場は非接触で物質に作用することができるという特徴を有している．これまでに得られた知見と磁場の特徴をうまく組み合わせれば，新しい磁場利用の形態が生まれてくるのではないかと期待している．とりわけ，磁場利用がこれまで検討されてこなかった現象·分野に浸透してゆけば，その機会も増えるのではないだろうか．本稿がその一助となれば幸いである．