粒界ガラス相を含まない酸化物共晶系耐環境皮膜の創製プロセス

摘要

近年のSiCセラミックスおよびその複合材料（CMC）は，高温で十分な強度と信頼性を有し，耐酸化性にも優れることから，ガスタービン部材への応用が約束されている.これらの材料をガスタービン部材として用いる際は，高温における基材の酸化と酸化により生じるシリカ層の水蒸気による腐食および減肉が問題となる．SiCセラミックスは，1250℃のガスタービン条件下における10，000時間の暴露で，3mm減肉すると報告されている．したがって，水蒸気による基材の減肉を有効に防止するための耐環境皮膜（EBC）が必要となる．著者らは，酸化物の耐水蒸気腐食性を調べた結見希土類シリケート相（Ln2Si2O7），ジルコニア相（ZrO2）およびハフニア相（HfO2）の耐水蒸気腐食性が，高温のガスタービン条件下で優れることを報告した．しかし，たとえ結晶相の耐水蒸気腐食性が優れていても，粒界に粒界ガラス相が存在すると，粒界ガラス相が選択的に水蒸気により腐食され，皮膜が多孔質構造となるため，基材の酸化および腐食を完全に防止することができない．したがって，粒界ガラス相を含まないEBC皮膜の開発が求められる．