電子顕微鏡によるフラーレン単分子のサイズの分析

摘要

高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)によってフラーレンC_(60)やC_(70)の量が僅かであっても，円状の形と大きさからその存在を確認することができる。 また,他の炭素材料に混ざっていたり結合したりしているようなフラーレンの存在も確認することができる。 そのようフラーレンには,C_(60)よりも小さく,五員環が隣接し,曲率が高く，歪が大きなものや,C_(60)よりもずっと大きく,結合相互作用が大きいものもある。 特にC_(60)よりも小さなC_(50)などは興味深いが，HRTEMによってC_(60)とC_(50)のサイズの遠いを確認できるかが問題となる。 ここでは以下のような目的で研究を行った。 （1）炭素材料にC_(60)を制御して加え,HRTEMによって個々のC_(60)フラーレン分子が確認できるかどうかを調べる,（2）既知の標準物質を用いてHRTEMで得られたフラーレンの半径を検量する,(3)確立されたHRTEMの技術を用いて，炭化水素が燃えてできたスス中の炭素材から容易には取り出せないフラーレンの同定とそのサイズの決定をする。