生物無機化学の勃興ブルー銅からブレオマイシンへ

摘要

1970年の前半は我が国も高度成長期に入り，大阪万博に象徴されるように社会全体に躍進する勢いを強く感じる時代であった．しかし科学の世界では，まだまだ欧米とは格差が大きく，学ぶことがほとんどであった．そんななか，1973年の夏，幸運なことに文部省在外研究員としてアメリカ合衆国ウェイン州立大学及びノースカロライナ大学の化学部に留学する機会を得，恵まれた環境のなかで，当時，話題の鉄一硫黄タンパク質のESR研究や活性酸素種の金属酵素による消去研究などに携わることができた．研究レベルに格段の差があったためか，実に親切に研究のイロハを教わり，その後の研究展開において大きな助けとなった．もしもこの機会がなかったら，世界の前線で研究を競うのはもちろんのこと適切な研究テーマの設定も難しかったであろうと，今も深く感謝している．