痛み応答の分子的統合理解：痛みによる'歪み'と'痛みシグナル'の客観的解析

摘要

慢性疼痛は，抑うつや不安障害を引き起こし，生活の質（quality of life ： QODの低下の原因となる。それらは，痛みに対する外因性のうつ病や，疼痛により誘発された内因性うつ病であることも少なくない。また一方で，疼痛の原因が明らかに身体疾患であり,精神症状が二次的反応として引き起こされた場合でも，精神症状が疼痛閾値を低下させ，病態を複雑化させるとともに症状を増悪させる3。このように，疼痛刺激は上位中枢を変化させ情動に影響を与えている可能性が臨床的に示唆されるが，疼痛による上位での分子応答に開しては，いくつかの報告があるものの，いまだ未知の部分が多い。