熱帯林のカミキリムシ（5）アジアのカミキリムシ（3）ヒゲナガカミキリ族（2）

摘要

前号（槙原，2008b）に続きアジアのヒゲナガカミキリ族の中でも，主要な森林害虫となっているフサヒゲカミキリ属，フサヒゲビロウドカミキリ属について解説する。さらに，前々号でツヤハダゴマダラカミキリAnoplophora glabripennisについて詳しく紹介したが，この属のAnoplophora chinensisもヨーロッパに侵入し，被害を出すようになってきた。悪いことに中国のA. chinensisが分類学的に見直され，日本，＼韓国のゴマダラカミキリA. malasiacaがシノニム（同物異名）とされ，A. chinensisが日本と韓国にも分布することなった（Lingafelter and Hoebecke，2002）。そのため，ヨーロッパに侵入したA. chinensisが，どこから侵入したのか判然としないなどの混乱を起こしている。日本の研究者はLingafelter and Hoebecke（2002）の分類体系に疑問を持ち，その分類を採用していない（槙原，2007）。日本で採用している分類体系ではヨーロッパに侵入した種の識別，侵入元を探ることば比較的容易である。そこで，ヨーロッパに侵入したゴマダラカミキリ類の種とその形態的な見分け方及びそれらの種の分布について解説する。なお，本項をまとめるにあたり，前報に引き続き，ベトナムのDr. Pham Quang THU（Forest Science Institute of Vietnam）に情報を提供していただいた。ここに厚くお礼を申し上げる。