工業デザインのIT化：デジタルエンジニアリングによる工業デザインプロセスの支援とその課題

摘要

成熟した市場，消費者の嗜好の多様化，アジア諸国に対する価格競争力低下といった背景のもと，我が国のコンシューマ向き製品は，機能や価格によるマーケットでの差別化がもはや困難な状況におかれている．その打開策として，魅力的なデザインにより製品の高付加価値化·差別化を図ることに企業の関心が高まりつつある．一方，3次元CADシステムに代表されるデジタルエンジニアリングの普及により，ものづくりの下流では相当の効率化が実現されつつある．企業では，さらに上流の工業デザインプロセスへもデジタルエンジニアリングを展開し，開発期間の短縮とコスト削減を期待している．しかし，市販3次元CADシステムを導入すれば効率化できるプロセスは一部あるものの，全般的に工業デザインの作業支援を目的とした実用的ソフトウエアの開発と普及はまだ立ち遅れている．しかし，その解決を目標として，様々な研究も進められている．本稿は，工業デザインプロセスを支援するデジタルエンジニアリング技術に関し，このような支援ソフトウエアの研究を中心に紹介する．