レーザー吸収分光用円筒型マルチパスセルの光学特性

摘要

近年，大気中の微量物質に起因する環境問題が広く認知されるようになってきた．この微量物質の濃度変化の測定やそれらの排出源を連続的に監視することは重要な課題である．現在，大気の監視に用いられている技術は化学発光や吸光光度分析を基本原理とするものや，クロマトグラフを利用するもので，前処理後の測定が多く、必ずしもその場の連続監視やリアルタイム計測には適さない．そこで，より高精度·短時間で連続的に物質定量する技術として，これまでにレーザー吸収分光法，レーザー光音響分光法，レーザー誘起蛍光法，ラマン散乱法やレーザーブレークダウン発光法など数々のレーザー分光分析技術が研究されてきている．その中でレーザー吸収分光でのガス検出に使用される長光路吸収セルは小さな体積の中に可変の吸収光路長（10m以上）を獲得可能なものが重視されている．従来のレーザー吸収分光法ではホワイトセルとヘリオットセルが使用されてきた．ホワイトセルは光路長を変更することが容易であるが大型である．ヘリオットセルは小型であるが光路長を変更する際の光学アライメントが技術的に困難である．本報告では新たに考案した，小型で光路長変更のアライメントが容易である円筒型マルチパスセルの光学特性とこの新型セルを用いて行ったガス検出例について報告する．