野菜作を改善よる新技術－雨よけ栽培ホウレンソウ用半自動多条移植機：中小規模生産地の振興を支援

摘要

ホウレンソウの雨よけ栽培が普及し，立枯病などの発生が大幅に軽減し，生育促進や葉いたみの減少などで品質が向上し，高温期の安定生産が図られている。さらに移植栽培にすることで，高温期栽培における発芽の斉一化と苗立ち率の確保，間引き作業の省力化，在圃期間の短縮による年間作付け回数増加などの利点もあげられる。 また，移植栽培におけるセル成型苗の利用は，既に他作物で活用されているセル苗供給システム等を利用しやすいこと，株間の調節が可能であること，比較的資材費が少なくて済むこと，作付け規模拡大が容易であることなどの利点が指摘されている。 しかし，セル成型苗を利用したホウレンソウの移植栽培では慣行の直播栽培と比較して移植時の労働負担が増加することが問題となり生産現場にほとんど普及していない。移植時の労働負担軽減方法の一つとして，移植機の利用が考えられ，株間の狭い栽培様式の作物に対応した市販の移植機として2条植えのタマネギ移植機が挙げられる。しかし，露地栽培での利用を前提としており，エンジン駆動で機体が重く小回りがきかないこと，2条植えであるため往復回数が多くなることなどにより，雨よけ栽培での利用は難しい。 そこで，露地レタス用に開発され，広く普及している半自動多条移植機を基に，株間の短縮ならびに軽量化·小型化を図り，ホウレンソウセル成型苗の移植に適した電動型半自動多条移植機（以下，試作移植機）を開発した。 本報告では試作移植機の概要とホウレンソウセル成型苗移植時の労働負担軽減効果等について紹介する。