高性能異方性ボンド磁石の射出成形

摘要

ボンド磁石（Polymer bonded magnets）は，ポリマー（バインダー）にフェライトや希土類磁石粉末を高濃度に混練·分散させた磁性コンパウンドを成形加工して得られる．ボンド磁石には，磁石紛末（磁粉）がランダムな方向を向いている等方性ボンド磁石（Isotropic bonded magnets）と一定方向に配向している異方性ボンド磁石（Anisotropic bonded magnets）がある．等方性ボンド磁石は，すべての方向に同じ磁気特性をもつが磁力は弱いものしか得られない．異方性ボンド磁石は，金型のキャビティ内に磁場を形成し，この中に磁性コンパウンドを射出成形することによって得られる．この時の磁粉は，C軸を磁化容易軸とする一軸性の結晶磁気異方性を有するものでなければならない．磁化容易軸の軸方向に磁場をかけると，比較的弱い磁場で磁化が飽和に達し，同時にキャビティ内で磁力線が走る方向にC軸が並び樹脂の固化によって磁粉の配向が固定される．この様にして得られた成形品が異方性ボンド磁石である．異方性ボンド磁石はC軸方向に強い磁力を発現し，磁力の強さを表す最大エネルギー積（BH）maxで比較すると，等方性ボンド磁石の約2～4倍強い磁石が得られる．電子機器の小型化·省エネ化が進むなかで，そこに使用される小型モータヤプリンタ用磁気口一ルなどの部品も小型化·高パワー化が要求され，フェライト系ボンド磁石の場合は，大半が磁力の強い異方性ボンド磁石である．ボンド磁石は，焼結磁石に比べて非磁性であるバインダーの容量パーセント分だけ磁気特性は劣るものの，寸法精度，複雑形状，薄肉化，割れにくさ，金属との－体化成形，量産性，長尺幅広磁石が得られるなどの優れた特長を有しているため，電子機器の小型化，高性能化に不可欠なものとして使用されている．