古代からの知恵を新しいものづくりへ

摘要

私たちは，外界から五感に対する刺激を絶えず受けている．光刺激，音刺激，振動や接触などの物理刺激に応じる感覚と味や香りなどの化学刺激に応じる感覚がある．これらの感覚情報は，目や耳などの感覚器によって受容され，大脳中枢入力部へ伝達される．中枢では送られてきた情報を分析，統合し，記憶と照合するなどして，対象を把握する．中枢出力部は，その結果に基づいて効果器である筋肉を制御する出力信号を送り出す．これにより，歩行や手を使うなどの動作を行なう．さらに，体内には，自己の状態を反映する平衡感覚や内臓感覚などもある．これが人間情報処理システムの一連の動きである．図1に人間情報処理システムモデルの概略を示す．このとき，刺激の受容に伴って生じる反応には心理的側面と生理的側面があり，様々なレベルが存在する．感性は，刺激に応じて感覚が引き起こされる働きや感覚·知覚を生じる感覚器官の能力を指し，感性工学は，「ひとの感性やイメージを具体的にものとして実現するための設計レベルへ翻訳する技術である」とされている．本稿では，これまでに筆者が取り組んできた感性評価に関する研究テーマに着目して述べることとする．