韓国における公的灌漑管理システムの導入と その影響の分析

摘要

発展途上国では灌漑管理の効率性,持続性向上のため，参加型水管理の導入が図られている.一方，韓国，台湾，日本などの先進国では用水の公的管理強化が求められている.特に韓国では，1980年代に公的管理が進められ，2000年に はすべての水利費が廃止された.本研究は将来における公的管理のあり方の検討に資するため，韓国の公的管理導入の 背景を明ちかにし，公的管理の水管理への影響を忠清南道を例に分析した.その結果，①韓国の水利組合にほ政府関与 の伝統があり，それが最終的に2000年の農業基盤公社による全面的な公的管理への移行を容易にした,②公的管理は広 域的な水利調整を容易にするなどの効果をもつた，③2000年の農民水利費負担の廃止と水管理の決定プロセスからの農 民の排除によって,政府の意図と異なり農民の水管理への参加意識が失われた，ことを明らかにした.