神経ペプチドによる免疫機能制御-臨床からみた研究の現状と今後への期待-

摘要

神経ペプチドによる免疫機能制御について，臨床家の視点から研究の現状を眺め，ついで今後の展開についての期待を述べてみたい。 振り返ってみるとこの領域の研究は1960年代から70年代にかけて相次いで同定されていった神経ペプチドに免疫担当細胞への作用が報告されたことに始まる。その後，80年代に入ってPCR法などの微量検出法によって免疫細胞内での神経ペプチドとその受容体の生合成が証明され，その情報量は急激に増加した。 ちょうどこの頃，免疫系の調節国子として見い出されたサイトカインが神経系，内分泌系機能へ固有の作用を持つことも明らかにされ，その意義の追求が始まった。 このような過程を通じて，現在，神経ペプチドによる免疫機能の制御は，実はより広く“神経－内分泌－免疫相関”の主要な－分野と捉えられるべきものと理解されるが，今までのところこの領域で得られた知見が臨床医学の世界に具体的な貢献をするまでには至っていない。