脳·腸相関一消化管機能障害と消化管運動障害の観点から

摘要

強い緊張や不安は，さまざまな消化器症状を呈する。 軽症の場合には食欲不振に留まるが，高度になると悪心·嘔吐，そして下痢を起こすことがある。 さまざまな心理症状が食欲の変調を来すことは日常的に経験することでもある。 情動による消化管機能の変化は，単に自覚症状にとどまる場合から，明確な消化管運動の変調まで様々である。 このような心理症状／情動と消化管横能との密接な関連を「脳?腸相関」と呼ぶ。 一方で，健康感を端的に示す言葉として「快眠?快食?快便」という表現がある。 心理的にも身体的にも健康であることを示すもので，「腸?脳」相関と言ってもよいであろう。 いずれにしても，情動と消化管機能は相互に密接な関連が示される。 臨床の場ではともすると情動によって起こる二次的な症状は軽視されがちであるが，近年の研究は情動によっておこる消化管機能の変調を科学的にあきらかにしつつある。