走査型ナノピペットプローブ顕微鏡を用いた微細加工

摘要

Micro-Electro Mechanical Systems：MEMSの開発には微細加工技術の進歩が不可欠である．こうした微細なデバイスの製作には一般に半導体デバイスプロセスで実績のあるフォトリソグラフィーが用いられている．しかしながら，この加工法は縮小露光装置やエッチング，真空製膜装置など設備が高価で複雑なプロセスを有する．また，加工精度が光の波長により制限されてしまうため，その限界を超えた微細化の努力が盛んに行われている．こうした微細加工手段の一つとして走査型プローブ顕微鏡（Scanning Probe Microscope：SPM）を用いた方法が知られている．SPMは極細なプローブを用いて固体表面をなぞることでその表面状態をナノスケールで観察可能な顕微鏡であるが，こうした顕微鏡機能以外にもプローブ先端と試料表面との強い相互作用を積極的に利用した表面微細加工装置として近年注目を集めている，SPM装置はシンプルで比較的低コストでありながら原子を直接操作して文字が書けるなど高い加工精度を有している．さらに，使用環境が真空中以外にも大気中，ガス中，液中などあらゆる環境で動作可能であることから，さまざまな状態の固体表面に対してさまざまな相互作用を利用した微細加工を施すことが可能である．このように動作環境を選ぼず，高い加工精度を有するSPM微細加工技術は次世代の電子デバイスやMEMSにおける試作技術をはじめ，幅広い分野への応用が期待され，盛んに研究されている．