県内酪農場における蹄病治療の課題と対策ならびにその改善事例

摘要

乳牛におレゝて蹄病等による跛行は牛の行動を制 限し，乳量低下，繁殖成績悪化，生産寿命短縮な どを招き，酪農経営に大きな影響を与える.家畜 共済統計によれば，山形県の引き受け頭数に対す る運動器病による成乳牛の病傷および死廃件数の 割合はどちらも全国平均より高く，また病傷件数 に対する死廃件数の割合も全国平均に比べ高い. 山形県の成乳牛における病傷事故および死廃事故 を病類毎に分類したところ，運動器病は病床事故としては5番目に多く，死廃事故としては最も多 かった.以上のことから，運動器病，特に蹄病が 山形県の酪農業における喫緊の課題であると考 え，平成22年に県内酪農家59戸および本会獣医師 22名に対し蹄病に関する意識調査を行った.調査 の結果，36%の獣医師が自身の蹄病治療が不十分 と答え，獣医師に蹄病の診療を依頼する酪農家は 半数に満たなかった.多くの獣医師がこれまでに 受けた研修が不十分である答え，枠場がなくても 治療を行うと答えた獣医師は3割に満たなかつ た.調査の結果，蹄病における問題として，蹄病 治療似に対する獣医師の経験、技術不足と治療環 境の不整備にあると考え，今回我々はその2点に 対する改善策として，本会獣医師に対する実地研 修の実施と治療環境の改善を行つた.