胃でグルタミン酸を味わう

摘要

空腹時に美味しい食事を食べると深い満足感を感じるが，この感覚は過去の食体験に基づき，栄養生理学的に問題のない好ましい食物であるとの認知に基づいている．満足感は味覚とともに生じる消化管からの内臓感覚を通じて脳で高次な情報処理を経て得られる感覚であり，栄養素の生体内恒常性維持に必須である．近年，食品に含まれる呈味成分であるうま味物質が味覚?内臓感覚を介し，摂食調節，食物の消化·吸収·代謝調節に深く関わっていることが明らかとなってきた．代表的なうま味物質であるグルタミン酸ナトリウムの消化管における内臓感覚誘発機構に関する筆者らの研究成果をもとにして，感覚生理学研究の重要性，特に美味しく食べることの生理的意義について考えたい．