物質使用障害患者の感情に焦点を当てた 統合的治療プログラムの開発Serigaya Collaboration for Open heart Project (SCOP)

摘要

物質使用障害の感情の問題についての注目は,精神分析をはじめとする臨床仮説からスタートしている.1950年代から60年代にかけて,精神分析では物質使用障害の病理を,口唇愛傾向, 乳幼児期に存在した全能感への固着など,乳幼児期の心理的課題の未解決と解釈した. Eriksonは乳幼児期の心理的課題を信頼感の獲得と位置付けている.したがって,精神分析の 立場からは,依存症の病理の背後には対人不信の問題が潜んでいるという仮説を立てることが できるだろう,1985年,Khantzianめは自らの臨床経験から自己治療仮説を導き出し,薬物の 使用は何らかの心理的苦痛に対する対処行動と解釈する新たな方向性を示した.このように, 古くから,物質使用障害患者の理解と治療のために,アルコールや薬物の使用という行動の背 後に潜んでいる心理的背景,感情の問題についての探求がなされてきた.