微生物資源：産業利用の視点から

摘要

微生物は肉眼では見えないにもかかわらず，人類との関ゎりは非常に深く，切っても切り離せない存在である.環境浄化や食品·医薬品製造などに役立つ"味方'の微生物もあれば，病原菌や衛生管理の指標とされる"有害"な微生物もある．いずれも人類が利用し，制御すべき研究の対象であり，これら微生物資源の保存?提供体制は広範囲の研究基盤として，対象·分野を越えて高いニーズがある.生きた微生物資源の保有機関は，"カルチャーコレクション"と呼ばれ，100年からの歴史があり，主に大学や公的機関の学術的事業として実施されてきた．保有機関からの微生物資源の取得の目的は大きく2つに分けられる．1つは指標菌として共通の微生物株と試験法によりデータ評価の標準化を目的とするもので，法令やガイドラインなどに材料（微生物株）として指定される場合である.もう1つは，研究の材料であり，論文や特許で公表されている機能や特徴の再現，あるいは未知の機能の探索や開発の材料として用いるためである.