特集「鹿児島湾?深奥な魅力を探る」にあたって

摘要

日本地図を広げると，ひいき目で見るからであろうか，九州南端のくぼみ，すなわち鹿児島湾は存在感のある姿で目に飛び込んでくる。地元では錦江湾 とよ1れているが，初代薩摩藩主，島津家久が詠んだ［浪のおりかくる錦は磯山の梢にさらす花の色かな」という歌がその名の由来とされている。南北約75 km，東西約25 kmの半閉鎖的内湾である鹿児島湾は中央部の最大水深が230 mを超え，大陸棚縁辺から陸棚斜面に匹敵する深さをもつ。日 本列島にはほかにもいくつかの半閉鎖的内湾があ るが，これほどの水深を有するのは鹿児島湾だけで ある。同湾が深いのは火山活動によって生じたカル デラに海水が浸入して形成されたためで，このよう な地形の湾は世界的にもまれである1).