高周波誘導加熱により部分熱処理したFe-Cr-Ni－Al－C合金製モータ用回転子の組織と磁気特性

摘要

多くのF8基合金では，A．点以下の温度域に強磁性のフェライト相（α）が存在し，一九A3点以上の高温域には常磁性のオーステナイト相（γ）が存在するl）。 それ故∴室温においてα相で構成されるFe基合金を出発材として，この出発材をγ相域で加熱保持後に室温まで冷却する熱処理過程において，高温で生成するγ相が，残留オーステナイト（γR）として室温まで安定に保たれるように合金設計を行えば，室温で強磁性にも常磁性にもなる材料を得ることができる。 このような合金を開発し，更にオーステナイト化過程における組織と磁気特性の関係を明らかにするため，著者らの一部は，Fe基多元系合金での系統的な合金設計を行い2川，その結私闘発したFe－Cr-Ni－Al－C合金における飽和磁化J借とγR比率の関係を定量化した5）。 それによると，Fe－17．3mass％Cr-2．Omas5％Ni－0．8mass％Al－0．5mass％C合金は，Acl点（1085K）より低い1053Kでの焼なまし処理を施すと強磁性のα相とM23C6型炭化物で構成される組織となり，l．46T　 と高いJ値を示した5）。