火山噴火と大気環境一第4講火山噴出物の大気動態?環境影響一②硫黄酸化物

摘要

火山噴火に伴う噴出物のうち、火山ガスは火山灰とともに広域の大気環境に影響を及ぼす。本講座の第3講①火山灰（新堀，2015）では、粒径数10ドmから数mmの比較的大きな粒子を扱い、航空路火山灰情報(VAA)や降灰予報など、近隣住民の生活に密接に関わる影響について述べている。一方で本講②硫黄酸化物では、火山ガスの主成分の一つであるSO_2ガスと大気中の酸化反応で生成される硫酸エアロゾル（粒径~数100nm）による大気環境影響について述べる。硫黄酸化物はSO_2ガスに代表される4価のSと、硫酸塩(SO_4~(2-)) に代表される6価のSを合わせてSOxと呼ばれる。対流圏でのSOxの大気寿命は数日~10数日と火山灰に比べて長く、より広く長距離にわたって拡散、輸送される。また物理?化学的性質も火山灰のそれとは異なるため環境影響も異なる。地上濃度が高くなればSO_2は人体に悪影響を及ぼし、対流圏のSOxは降水により効率的に大気から除去されてSO_4~(2-)として土壌?陸水環境の酸性化をもたらす。硫酸エアロゾルは太陽光を散乱するため、ひとたび成層圏に注入されると降水除去が働かないため寿命が延びて、数年間にわたって地球を冷やし続けることもある。