火山噴火と大気環境一第3講火山噴出物の大気動態?環境影響一①火山灰

摘要

火山噴火に伴う噴出物のうち、火山灰は火山ガスとともに広域の大気環境に影響を及ぼす。浮遊火山灰や降灰による大気環境への影響は自然起源であり、一般に人為起源の大気汚染とは区別される（二宮，2012）。火山灰による災害を未然に防ぐため、大気中の浮遊火山灰（火山灰雲）については前講（木下，2015；篠原，2015）で紹介されているように航空路火山灰情報（VAA、例えば、白土，2013）が、地表への降灰については降灰予報（例えば、Hasegawa et al.， 2015；山里，2015）が気象庁から発表される。入門講座『火山噴火と大気環境』の3講目は、VAAや降灰予報が対象としているような、火山灰が短期的に大気環境へ与える影響の観点から解説する。2節で火山灰の物理的および化学的性質の基礎に触れた後、3節で主に気象レ一ダ一と衛星のリモ一トセンシングによる火山灰雲の観測について述べる。VAAや降灰予報で運用している即時的な火山灰輸送の数値シミュレ一シヨンについては4節で簡単に紹介する。5節で火山灰の大気環境影響について知られている事象をいくつか示す。