工キシマーレーザー励起パルス色素レーザーと圧電素子を用いた光音響分光法（PAS）による室温溶液中分子の二光子吸収帯測定の試み

摘要

分子の二光子吸収帯の測定法には，蛍光法，熱レンズ法，光音響法，イントラキャビティーレーザー法などの方法がある．このうち良く使用される蛍光法は，蛍光励起スペクトルの測定と原理的にはほぼ同じであるが，触発光性や微弱発光性分子には適応できない．また，蛍光法は溶媒や溶質分子からのパイパーラマンやハイパーレーリ．一散乱光が強い場合や励起波長と分子の発光波長が重なる場合にも用いることが難しい．ただし，蛍光寿命が比較的長い分子ではシグナルの時間分割により蛍光成分のみを分離することは「一応可能である．蛍光法以外の方法では分子が無発光性でも二光子吸収帯測定が一応可能である．圧電素子を用いた光音響分光法（PAS）では，光と分子の相互作用の結果生ずる熱発生に伴う試料の庄変化を検知するl）．っまり，分子を光学励起すると，励起された分子は編射または無頼肘遷移により最終的に基底状態に横和するが，この際，無帽射遷移エネルギーの大部分は熱に変換され，この熱は試料に圧変化を起こし，この圧変化を圧電素子により検知するわけである．ここでは，庄電素子を用いたPASを，室温溶液中分子の二光子吸収帯測定に適用し，実際に測定した例と測定条件や測定の際の問題点などについて報告する．圧電素子を用いたPASによる分子の二光子吸収帯の測定例は蛍光法に比べて非常に少ない．実際，Scirusでキーワードtwo－photon＋photoacousticとtw叩hoton＋fluorescenceで調べてみると，前者は2003年までの論文数がわずか4報であるが，後者は1247報である．実際に測定を行ってみて，測定がそう容易ではないという印象を受けたので，本報告が何らかの参考になれば率いである．