細胞核構造と機能のストカスティックな制御

摘要

真核生物では，遺伝情報を担うDNAはクロマチン構造をとって核内に存在し（Fig．1），生物にとって基本的な機能である過信情報の維持，複製と過信情報の発現の出発点といえる転写ほ核において行われる．桟の中には単にDNA（クロマチン）が無秩序に詰め込まれているわけではなく，高度に組織化され，その機能の発現は構造の形成とも密接に関係している．たとえば，核小体は，リボソームRNAの転写とリボソーム形成の場所であるが，その構造は通常の位相差または微分干渉顕微鏡でも観察できる（Fig.1.A）．また，DNAまたはクロマチンを構成するヒストンの染色像により，核内をクロマチンがほとんど存在しないクロマチン間領域，低密度で存在するユークロマチン（異正クロマチン）領域，そしてクロマチンが高密度で存在するヘテロクロマチン領域に大別することができる（Fig.1A）．一般に，活発に転写が行われる遺伝子はユークロマチンに存在し－ヘテロクロマチンのDNAは転写の鋳型としての活性が低く，複製するタイミングも遅い．