国際機関が提起する「数学的リテラシー」概念の意味

摘要

これからの時代に生きる市民に求められる数学的な能力とはどのようなものれ　 本稿は，国際機関や国際的な学協会によって提起された「数学的リテラシ－」及びその関連概念を検討することを通して，我が国の市民に求められる数学的リテラシー像を吟味することを目的としている．このような概念の代表的なものとして，OECD－PISAにおける「数学的リテラシー」概念，ユネスコの「万人のための教育」（Education for All）による途上国の識字教育に関わる「数学的リテラシp」概念，そして国際統計教育協会の国際統計的リテラシープロジェクト（InternationalStatisticalLiteracy Project）による「統計的リテラシー」概念を検討する．これらの概念は，それぞれの機関が実施するプロジェクトのねらいによって規定の重点が異なるものの，数学的な知識技能を身につけているかどうかという従来の「識字力」の意味を超えて，個人が数学的な知識技能を活用して自分のおかれた状況を批判的反省的にとらえる力を問う点において共通点がみられる．このことば，我が国の市民が身につけるべき数学的リテラシー像を考える上で，この視点が欠かせないことを示唆している．