大規模崩壊の兆候となる微地形の抽出手法—天川村における評価事例—

摘要

近年,大規模な土砂災害が毎年のょうに発生しているc大規模崩壊は,豪雨時に突発的に発生するものではなく,平常時ょり重力にょって斜面の変状が進むことが数々の研究で知られている~(1),2),3))。鈴木(2000)~(1))は,基盤崩落の発生する斜面は,初生的なせん断面の形成に起因する二重山稜や腕曲状河系や並流谷あるいは水平方向のリニアメントが谷壁斜面の上部に発達していることがあるとしている。笹原他(2012)~(2))では,高知県東部の深層崩壊の事例として稜線上の緩斜面に上下二段の遷急線,段差地形や線状凹地のある箇所が崩壊していることを紹介している。千木良他(2012)~(3))は,深層崩壊の多くはその頭部となる部分に小崖あるいは線状凹地を伴いそれらが崩壊の輪郭にほぼ沿っていることを明らかにした。本研究では基盤崩落~(1))や深層崩壊~(2),3))という災害を総じて大規模崩壊と記す。大規模崩壊の兆候を示す斜面上の小さな変状 (以下微地形と記す)を机上で抽出できれば,危険度の高い斜面を事前に把握できる。しかしながら,微地形の状況を既存の地図や空中写真で評価することは熟練した技術者でなければ規模,位置を把握することは難しい。