TLO（技術移転機関）を利用した企業イノベーション－不況脱出に頼れるのは技術力

摘要

百年に一度と言われる実体経済の大不況時代を迎えて，TLO (Technology Licensing Organization)活動の歴史的経緯が注目されている．大学等を対象とする技術移転機関であるTLOの活動は，工業が日本とドイツに敗れ，街に失業者があふれた1980年代の米国で始まっており，大学内にTLOを持ち，大学の発明を特許化して産業界に販売し，特許料を大学に還元している．バイドール法の制定に加速され，すでに25年以上の活動実績を持っており，1996年度経済モデル評価で米国の産学間のライセンス件数は約28,000件，ロイヤリティ収入は300億ドルの売上増加，25万人の雇用を生み出したといわれている．日本では，1998年の「大学等技術移転促進法案」の制定からTLO活動が始まった．大学の社会貢献が重要視され，2004年度から国立大学が法人化されたことにより，日本型産学連携の基盤が整備され，現在承認TLOは47機関が活動している．米国の例に倣い，産業界が不況を早期脱出するテコとしての大学技術の導入に向け，TLO活動が評価される時代となった．企業のイノベーション創出に貢献できる技術シーズ提供を目指したTLO活動を紹介する．