逆問題における一意性,安定性などの数学解析と事例紹介

摘要

ある現象が進行しているときに，それがなぜ起こったのかという原因や直接知ることができないような様相を，限られた観測データから決定するような問題は広く逆問題と呼ばれている．計測とセンシング技術は知りたい対象の量や状態を測定するためのものであり，逆問題の発想に深く関連していると考えることができる．さて，現象の原因を探る問題は逆問題といえるので，逆問題はきわめて広い範囲の問題を含む．逆問題の数学を考えるためには，現象自体が数学モデルですでに記述されていると，話は単純化される．そこで，基本的な物理現象である熱伝導と波動をとりあげ，まずそれらの現象に関する逆問題の数学について解説をする．