アスベスト問題について：低温加熱粉砕法によるアスベストの無害化処理技術

摘要

繊維状ケイ酸塩鉱物の総称であるアスベストは，これまで材料としてのある面でその優れた特性により，無防備に，高濃度に集めて加工され，そしてその製品は現在においても使用され続けている．そのため人間が不本意にも多量のアスベストを長期間吸い込む環境が生じ，その結果として疾患を招いた．今日この弊害は公知の事実となり，対策がとられるようになって，今後は疾患を懸念しなければならないぽど多量にアスベストに暴露されることはないと思われる．ただ，厚生労働省の定める「石綿則」でも注目しているように，石綿含有建材の撤去作業時には注意すべきことがある．そして，今後年100万トン単位で排出される累積4000万トン以上とも推定されるアスベスト建材の廃棄物の問題が残る．埋め立て処分場の枯渇の問題が差し迫っており，アスベスト廃棄物の減容·無害化は急務の課題である．現在環境省を中心に溶融法での処理を検討している．アスベストの95％は，蛇紋石族系のクリソタイル(Mg{sub}3Si{sub}2O{sub}5(OH){sub}4)とみてよい．それゆえに，アスベストの無害化のためにはほぼクリソタイルの処理法を中心に取り組めばよいといえる．ここでは，溶融法と一線を画するクリソタイルの鉱物的な特徴を生かした無害化処理技術について解説する．この方法は鉱物としてのクリソタイルの物理化学的性質を利用したもので，現行の厳しいアスベスト含有分析基準(JIS A1481:2006)に準拠するなら，さらに検討を要する課題があることをはじめに申し添えておく．