製造産業を支える中核的ファインセラミックス部材：セラミックスのニアネットシェイプ製造技術と複雑形状部品への展開

摘要

通常，所定の形状を有するバルキーな焼結体を得るための大まかな製造プロセスとしては，原料調製，成形，焼成および加工などの工程を経る．そして，この焼結体の作製の目的が，実験室レベルあるいは基礎研究的段階における最適な製造条件の確立検討や種々の特性評価などを行うということに限定されるのであれば，おおよそ手のひらにのる程度の大きさで，板状あるいは棒状の形状を有する焼結体が得られれば良いということになる．さらに，得られた焼結体を任意の形状の試料（試験片）にしたい場合は，ダイヤモンドカッターなどを用いて切断後，ダイヤモンド砥石あるいはダイヤモンド粒など用いて所定の表面状態になるまで研削や研磨を行うことが一般的である．しかし，大量かつ効率的に所望する形状，特に3次元の複雑な形状に精密加工を行うとなれば，その加工時間および加工コストなどが問題となる場合がある．そのような状況の中で，所望する焼結体の性能，形状およびコストなどの目標値をクリアにするために，現在，様々なセラミックスの作製方法が実用化あるいは提案され，機器，装置として販売もされている．近年，小型精密かつ3次元複雑形状な焼結体を安価に自動量産作製することが可能な工業的製造法の一つとして，セラミック粉末射出成形法(CIM, Ceramic Injection Molding)が注目を集めている．そこで，本稿では，本成形法を用いた，高精密かつ3次元複雑形状を有する緻密質ニアネットシェイプ焼結体の作製などについて，筆者らの共同研究成果などを中心に概説する．