セラミックス蛍光体の発展－次世代のディスプレイおよび照明用蛍光体：次世代照明における蛍光体

摘要

日本で初めて電灯による照明が実用化されたのは，明治15年である．東京中央区の銀座には，日本最初の電気街灯建設の地を記念して銀座記念灯がたてられている．当時の電灯は，アーク放電を利用したカーボンアーク灯であった．照明器具は，1938年のインマンによる水銀を利用する蛍光灯の開発により大きく発展した．水銀は，低い蒸気圧で放電させると，効率的な254 nm（および185 nm）の紫外スペクトルを発する．紫外線は目には見えないので，ガラス管内に塗布した蛍光体により白色光に変換する．蛍光灯は発熱が少ないため，同じ明るさを得るのに必要な消費電力は，白熱電球の1/5程度である．つまり，蛍光灯は家庭で利用できる簡易照明器具として最も効率的なものである．しかし，欧州において採択されたRoHS指令により，電気·電子機器製造者は，鉛や水銀のような有害物質の使用を禁じられることが決まっている．水銀を利用する現在の蛍光灯は，代替技術のない現状から現時点では全廃の対象にはなっていないが，規制の対象になった時点で，われわれの身近にある現在の蛍光灯は姿を消し，代替技術に基づく照明がわれわれの周囲を照らすことになる．蛍光灯を代替する照明技術としては，白色LED，水銀フリーランプおよび有機·無機ELが考えられる．本稿では，そのような次世代照明に関する蛍光体開発の状況について概説する．