薄肉アルミニウム合金の消失模型鋳造法における湯流れに及ぼす塗型通気度の影響

摘要

高い燃料効率のために多くのアルミニウム合金鋳物が自動車部品に使われている．消失模型鋳造法（EPCプロセス）は，鋳型の分割，型合わせ，中子入れの作業が不要となり，ニアネットシェープな鋳造品が得られるので，特に自動車部品のような複雑形状の薄肉鋳物において有用である．さらに鋳型にバインダーを添加していないので環境への負荷が少ないだけでなく，充てん砂の再利用率が極めて高い．このためけい砂から人工砂への移行が進む状況下においてはコスト的にも非常に有益である．しかしながら，EPCプロセスでは，発泡ポリスチレン（EPS）模型の熱分解，熱分解生成物の塗型膜を通しての排出を伴うため，溶湯充てん機構は通常の空洞鋳型の場合と異なり非常に複雑であり，湯流れ速度は極めて低い．特にアルミニウム合金鋳物を鋳造した場合，鋳鉄と比べて溶湯温度が低くEPS模型の熱分解速度が低いので，湯流れ速度はさらに低くなる．この結果，鋳型への放熱時間が長くなり湯先温度低下による湯回り不良が起こりやすい．さらに薄肉鋳物の場合は，比表面積増加によって湯先温度低下がより著しくなることが予想される．これに対して，高通気度塗型を用いると湯流れ速度が高くなり，湯流れ性も向上することが期待される．しかしながら，塗型通気度が変化すると湯先と未分解EPS模型間に存在する熱分解ガス層厚さも変化するため，塗型通気歴と湯流れ速度とは単純な関係ではなく,高通気度塗型を用いることによる湯流れ速度への効果は簡単に推定できないことが予想される．