薄肉球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼすセリウム，ランタンの影響

摘要

希土類元素（RE）の添加が鋳鉄の機械的性質の向上に繋がることば良く知られている．球状黒鉛鋳鉄の無テル化や伸びの向上には，黒鉛晶出の下地となる不均質核を数多く生成させ，黒鉛粒数を増加させることが有効である．著者らは，テル臨界粒数以上の黒鉛を晶出させることでテルのない組織が得られ，また黒鉛粒数の増加により基地組織がフェライト化しやすくなり，伸びが向上する事を報告してきた．さらに，球状黒鉛鋳鉄溶湯中の元湯硫黄（S）量に対し化学量論的な量のREを添加する方法についても報告した．これにより，REとマグネシウム（Mg）の複合硫化物（RES＋MgS）が不均質核となり黒鉛晶出の下地，いわゆる黒鉛核として作用し，黒鉛粒数が大幅に増加することで薄肉部でのテル化傾向が低減した．また，高マンガン（Mn）鋼スクラップのリサイクルを目的とし，黒鉛粒数増加の一考察としてREの添加時期を変化させた方法や他の元素との複合添加による黒鉛粒数増加機構についても報告してきた．