多合金系白鋳鉄の晶出炭化物の形状とその組成に及ぼすモリブデン,タングステンの影響

摘要

近年，鉄鋼圧延用ロール材として開発された多合金系白鋳鉄は，極めて硬いMC，M{sub}7C{sub}3，M{sub}2C及びM{sub}6C炭化物を利用しているため，優れた耐摩耗性を有し，セメントクリンカや石炭など鉱物粉砕用としても使用されている。 著者らはFe-2％C-5％Cr-5％V-5％Mo-5％W-5％Co（各々mass％）鋳鉄中に存在する炭化物の形態，合金組成及び結晶構造について透過電子顕微鏡（TEM）及びエネルギー分散型分析装置（EDS）等により調査を行なった．その中でM{sub}2C炭化物は熱処理などの高温加熱によってM{sub}2C＋γ-Fe→MC＋M{sub}6C＋M{sub}7C{sub}3という特徴ある炭化物反応をすることが見出された．したがって，M{sub}2Cを優先的に生成し，かつM{sub}6Cにおいても主要な構成元素であるMo及びWは重要な元素である．MoとWは一般的には類似した性質を有するとされるが，炭化物の形態及びその組成に及ぼす両合金の影響を詳細に調査·研究することが，本合金の最適な設計のために望まれていた．そこで，本研究では同系合金中MoとWの含有量を変化させて，鋳造及び熱処理後における晶出炭化物の種類及び形態と合金組成，さらには前記炭化物反応に及ぼすMo 及びW量の影響を明らかにした．