中国鉄鋼業の現状と課題（後編）

摘要

IISIのまとめによると，今年上半期（1～6月）の世界の粗鋼生産（61カ国）は，前年同期比7.6％増の5億4,634万トンとなり，上半期の最高記録を更新した。 中国は1億6,486万トン（同24％増）で3,630万トンの大幅増となり，世界全体の増加量約3,800万トンにうち殆どは中国によって占められた。 中国政府は生産抑制策を検討しており，下半期も同様の増加となるかは疑問だが年間の粗鋼生産は3億トンを突破することは確実である。 このような増産基調は，もとより堅調な需要増に対応したものであるが，情報通によると，別な変因も増産に拍車をかけたといわれている。 前項で紹介した鉄鋼産業新政策では，産業の集中度を高め2010年にはトップ10の全国シェアを50％超とすると規定されており，また年産500万トン以上の鉄鋼企業（グループ）の新規設備投資の実行を優先させるとしている。 このような政府の意向を察知した10位前後の多くの中堅企業，年産500万トンに満たない中小企業が可能な限り増産を図ったとされる。その結果，実需以上の粗鋼生産が行われ，余剰の製品（汎用品が多い）は日本，韓国，台湾などアジア地区に輸出され，それらの地域の需給緩和に大きな影響を与えている。 更に，新政策では2010年時点で「3，000万トン規模」の鉄鋼企業グループが2社，「1，000万トン」規模若干数と想定しているが，今後大手企業グループ間での再編が大きく進むものと思われる。 このような事業の再編劇に世界の鉄鋼企業グループは直接間接に繰り込まれていくことが予想され，その動きに予断を許さないものとなろう。