中国鉄鋼業の現状と課題（前編）

摘要

最近，BRICsという概念が，新聞の経済欄や経済誌で頻繁に論じられてきている。 ブラジル，ロシア，インド，中国の4カ国の頭文字をとった造語である。 この概念は米国の大手証券会社のゴールドマン·サックス社が2003年秋に投資家向けにまとめたレポートで用いられて以降，注目されている。 現在のペースで経済が発展していくと，上記4カ国が世界の経済地図を大きく塗り替えるという予測である。 しかし，鉄鋼需要という観点から，これら4カ国の発展状況をみてみると，表1でみられるように，中国を除いてブラジル，ロシア，インドについてはここ10年間で大きな上昇は見られない。 IISI（世界鉄鋼協会）が作成した人口一人当たりの粗鋼見掛け消費（生産＋輸入-輪出）では，ブラジルが1994年では87.2kg，2003年では97.7kg，ロシアがそれぞれ144.4kg，186.1kg，インドが24.2kg，33.4kgであるのに対して，中国では1994年には101.6kgであったのが，2003年には197.9kgと倍近くに増加している。 中国では何故このように鉄鋼需要は増加したのか，このような傾向は今後も継続していくのか，考察してみたい。