陶磁器の彩色と抗菌

摘要

陶磁器と言えば,瀬戸物に代表される茶碗や壷などのいわゆる「焼き物」のこどであり,陶芸家が創り出す芸術作品や,建築材料であるタイル,住宅の洗面·トイレで利用され衛生陶器も代表的な「焼き物」の一つである.紀元前2650年頃にエジプトのサッカラ(Saqqara) 地区に建設された最古のピラミッドで知られているジュセル(Djoser)王のピラミッド地下通廊の壁面に青緑色の釉薬(ゆうやく·うわぐすり)を施されたタイルが使用されていたことは,このピラミッドを調査したフランスの考古学者Leaurが報告している.世界最古の内壁タイルであり,その青緑色の発色は銅によるものであった.一方では,素地（きじ）に釉薬が施されて形態の整った焼き物を作り始めたのは紀元前1400年頃の中国とも言われているが,いずれにしても長い歴史の中で脈々と受け継がれている陶磁器にとって,金属元素は無くてはならない存在である.