熱間工具鋼の被削性におよぼすシリコン量と潤滑油塗布の影響

摘要

汎用熱間工具鋼JIS SKD6，61，62はSiを約1 mass％含有している。 熱間工具鋼におけるSi添加の効果としては，高温耐酸化性の向上，変態点の上昇，焼戻し2次硬化，などが知られている。 近年，熱間工具鋼のき裂対策としてSi量と勒性の関係が研究され，Si量を低減した高靭性工具鋼が開発されている。 筆者らもSi量と高温強度の関係を研究し，低Si化に伴い焼人加熱時の未固溶炭化物量が低減し，焼戻しによるMC析出量が増加するため高温強度が上昇することを明らかにした。 他方，Si量の低減による被削性の低下が課題となっている。 筆者らは熱間工具鋼の被削性に及ぼすSi添加の影響をフライス加工について調査し，Si添加の効果として切りくずに生成したスケール層が凝着を抑制する潤滑効果を有するとの見解を提案してきた。 これに対してFujii らは，熱間工具鋼の被削性に及ぼすSi添加の影響をエンドミル加工と旋削加工について調査し，低Si化により高温強度が増大し，その結果，せん断応力が増大するために被削材の工具への凝着が激しくなり，被削性が低下すると報告している。そこで本報では熱同工具鋼の被削性に及ぼすSi添加の影響をフライス加工について調査するとともに，潤滑油塗布の効果も合わせて調査し，工具損傷に及ぼすSiの効果と潤滑油の効果を比較することにより，Siの被削性改善機構を考察した。