歯科接着システムの進歩（上）接着のメカニズム

摘要

う蝕などによって歯の一部に欠損が生じた際、人工材料を用いて、阻嚼機能や審美性の回復が図られる。補修材として、前歯部の歯冠修復には天然歯に近い色調の合成高分子材料やセラミックスが用いられ、臼歯部には機械的強度の高い金属が用いられる。 補修材は接着剤で歯質に直接接着される。 接着の対象となるのはエナメル質、象牙質およびセメント質で（図1）、それぞれ異なった化学組成〔エナメル質；リン酸カルシウムを主体とした無機成分：96.8％、有機性分：0.8％、水分：2.3％象牙質；無機性分：69.3％、有機性分（ヨラーゲン）：17.5％、水分：13.2％セメント質；無機性分：45～55％、有機成分：50～55％〕、異なった結晶構造と形状をもっている。