骨セメントに関する研究の最近の話題－人工股関節置換術におけるセメントマントル圧力測定

摘要

骨セメントの種類や処方，また骨セメント単体の力学特性や強度特性について纏められた成書が既に刊行されている。さらに，最近では初期の局所感染防止の観点から抗生剤を添加した骨セメント（Antibiotic-loaded cement）を用いる場合があり，非常に多くの骨セメントキットが市販されていて，かつ抗生剤添加が強度に及ぼす影響も調べられている。上方，骨セメントを使用する人工股関節（英国のJ.Charnley卿が開発したCharnley式が良く知られている：図1）置換術に注目してみると，同置換術は初めて行われて以来，数十年にわたりさまざまな改良を加えられながら現在にいたるまで幅広く行われている。しかしながら，先に述べたように術後15～20年以上経過すると，ステムを固定しているセメントの緩みにより再置換術を余儀なくされる例のあることが問題とされてきた。そして，長期にわたる骨とステムの接合性の維持のためには初期段階における骨セメントの固定性が重要であると言われている。以上のように骨ヤメントに関しては多くの研究があることから，本解説では人工股関節ステムの初期固定性に的を絞り，セメントマントル圧力測定によって検討した著者らの研究を中心に紹介すをさとにしたい。