下水道用紫外線消毒装置の実用化

摘要

下水の二次処理水の消毒手段として，塩素を使用した薬品による消毒が行われてきたが，薬品の注入過多や液漏れにより魚類に悪影響を与えたり，トリハロメタンなどの発癌（がん）性物質を生成したりして，問題視され始めている。 このため，薬品を使用しない消毒手段として最近，遺伝子伝達情報を持つDNA（デオキシリボ核酸）に直接作用する紫外線光による消毒が注目されている。 紫外線光が大腸菌などに照射されると，DNAの塩基列中のチミン（C）が並んでいる箇所で，C＝C（チミン二量体）が生成されDNAの複写が阻止される。 これにより，細菌などの増殖を抑制し，その個体の死とともに絶滅する。この結果，環境にクリーンで，耐熱性，耐薬品性の菌やウイルスなどに対しても種類を問わず十分な消毒ができる。 紫外線消毒装置は，高周波発生器を内蔵する制御盤と紫外線照射モジュールから成り，比較的シンプルに構成される。 そのため，塩素系消毒装置のように，維持管理に神経を使う薬品タンクや薬品ポンプなどの設備を必要としない点にメリットがある。更に，消毒は処理水が紫外線ランプの周囲を流れる間に行われ，処理水とランプとの接触時間も短時間で済むため接触水槽も不要となり，省スペースでの設置·増設が可能となる。 したがって，紫外線消毒装置は，下水処理場の最終沈殿池からの放流堰（せき）に設置され，紫外線光により消毒された水だけが河川に放流される場所に設置される場合が多い。